パブロフの犬
〜条件反射の実験と人間の条件付け

『パブロフの犬』を知っていますか?

言葉だけでイメージすると、何だか「フランダースの犬」のような心温まる物語でも飛び出して来るのかと思ってしまうかもしれません……。
しかし、実はこれ「条件反射に関する実験結果」のことです。

……とはいえ、これは非常に興味深くて有名な実験です。

人間というものを知る上できっと役に立つものなので、ぜひ最後まで読んでみてください。

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目次

パブロフの犬とは?

「パブロフの犬」とは、犬にエサを与える時、ベルを鳴らしてから与えるという事を繰り返していると、ベルを鳴らすだけで犬がよだれを垂らすようになるというもの。

この犬にとっては「ベル=エサ」という条件づけが出来上がったため、本来エサとは無関係の「ベル」の音を聞くだけで体が反応してしまうようになるというわけです。

1902年、ソビエト連邦の生理学者イワン・パブロフがこれを発見しました。

現在では 条件反射の例え として用いられ、「パブロフの犬」と言えば「条件反射」のことを意味しています。

知らぬ間に条件づけられてる?

犬や動物だけでなく、我々人間も幼児期からこれまでに経験してきた様々なことから数多くの「条件反射」を持っています。

パブロフの犬の実験に起因する「刺激と反応のモデル」にあるように、ある特定の刺激に対して特定の反応をするようように条件付けられているわけです。

「梅干を見たらツバが出る」

……といった誰でも同じような反応をするもの。

「この曲を聴くと胸が締め付けられる」

……といった過去の個人的な経験から来るもの。

「人前に出ると体中から汗が噴き出す」
「学校に行こうとするとお腹が痛くなる」

……なんて、ちょっと困ったものもきっとあるでしょう。

これらは、一度条件づけられたらその後は自動的に発動します。そして、いつも同じ反応を繰り返すときそれを習慣といいます。
習慣とは固着化した反応のことであり、その人の人生を大きく左右します。

つまり、いつの間にか条件づけられた反応によって我々の人生は大きく左右されるということです。

条件づけを変える?トラウマだって克服できる

しかし、動物は本能や訓練によって条件反射をプログラムされているに過ぎませんが、人間は刺激と反応の間に選択の自由を持っています。

反応は後天的な条件付けの結果であるわけだから、再学習や学習解除をすることが可能なのです。

だから、自分にとって好ましい反応を身に付けることだってできるのです。

例えば、高所恐怖症の人であれば、ビルの1階から順番に登っていき、「大丈夫」だと何度も確認するすることで再学習したりすることで、過去に作られた条件反射を作り変えることが可能です。

つまり、あなたが過去にどんな経験をしていたとしても、どんなトラウマを持っていたとしても、その気になれば克服することが可能だということです。

依存症からの脱却も同じ原理

最近では、この「パブロフの犬」の原理を利用して、薬物依存、アルコール依存、ギャンブル依存などの「依存性」に対する治療も行われています。

例えば、「覚せい剤は気持ちいい」という認識を「覚せい剤は効かない」という認識に変えていきます。

具体的には、注射器を腕に当てるなどドラッグを使う真似をして空振り(全く効かない)を繰り返し体験させる事で脳や体に新しい記憶を覚え込ませます。

……つまり、何度も繰り返して染み付いた記憶の上書きをするということです。

ちなみにこれは「禁煙」にも同じことが言えます。

私個人の経験ですが「禁煙」しようと思った時に最も苦しんだのは、タバコの成分であるニコチンへの依存というより、「お酒を飲んだら一緒にタバコ」「車の運転席に座ったらまず一服」「コーヒーとタバコはセット」といった身についた習慣(反応)でした。

まさに「パブロフの犬」です。

日常のいたるところにパブロフの犬でいうベルが鳴るシーンがあり、そのたびに私はタバコのことを思い出してしいたというわけです。

結局、タバコをガムに置き換えることで禁煙は成功しました!

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条件づけの種類

ちなみに、ここで紹介した「パブロフの犬」のようなことを「古典的条件づけ」あるいは「レスポンデント条件づけ」と言います。

これに対して、ソーンダイクの実験というものがあります。

「猫を箱の中に入れ、偶然てこを踏むと扉が開き、外に出ることができる。何回もこれを繰り返すうちに、猫はてこを踏んで外に出る要領を覚えてしまう。つまり外に出ることを学習したことになる」

……というものです。

この条件づけを「道具的条件づけ」あるいは「オペラント条件づけ」と呼びます。

(※オペラント条件づけについては「飴と鞭(アメとムチ)」も参考にしてみてください)

先ほどの「古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)」が、ある刺激に対して条件反射的に反応するものであったのに対し、「道具的条件づけ(オペラント条件づけ)」は何らかの結果を求めて自発的に行動するよう条件づけられるというものです。

まとめ

『パブロフの犬』とは条件反射のことでした。
特定の刺激に対して特定の反応をするようように条件付けられることです。

人間も知らぬ間に条件づけられています。

あなたの困った習慣も、あの人の困った行動も、過去の経験から条件づけられた(学習した)ものと言えるでしょう。

ただし、人間はこの条件づけから自由です。
先ほど書いたように、人間は刺激と反応の間に選択の自由を持っているからです。

もしあなたを苦しませる不要な条件反射があるのなら、まずそれに気づくことから始めましょう。

そして、自分がどんな条件反射をしているのか気付いたら、それを変える新たな条件反射を作る仕組みを考えていくのです。

先ほどの依存症の克服の例と同じです。

これができれば、悪い習慣を断ち切り、良い習慣を身につけることができるようになります。

結果として人生が良い方向に好転していきます……条件反射の力、侮れません!

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カテゴリ モチベーション理論
 タグ  脳科学

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