「スタンフォード監獄実験」というヤバすぎる心理学実験とは?

過去に行われた心理学実験の中には、今では絶対に許されないような実験が含まれています。

その中の一つに「スタンフォード監獄実験」という実際に行われた有名な実験があります。

実験の内容は、監獄を模した施設で被験者を囚人役と看守役に分け、その行動を観察するというもの。

この実験の中で被験者たちの行動はどんどんエスカレート。
人間の邪悪な側面が浮かび上がることになります……。

そして、被験者たちは非常に危険な状態に陥り、ついには実験は途中で中止されることとなりました。

その内容があまりにも衝撃的だったため、すでに何度も映画化されているほどです。
「スタンフォード監獄実験」とは、一体どんな実験だったのでしょうか。
実際の写真とともに詳しくまとめました。

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目次

スタンフォード監獄実験とは?

スタンフォード監獄実験とは、1971年、アメリカ・スタンフォード大学で心理学者フィリップ・ジンバルドーが行なった実験。

この実験でジンバルドーは「人間の行動はその人の気質や性格で決まるのではなく、置かれた状況によって決まる」ということを証明しようとしました。

「実験により、そこに置かれた被験者がその人の本来の気質や性格と違う行動をすれば、それは状況が力が働いたことになる」というわけです。

そして、実際に行われたのが次のようなこと。

実験の準備

スタンフォード大学の地下実験室を改修して、本物に似せた実験用の刑務所を作り新聞広告などを利用して被験者を募集。

集まったのは、普通の大学生など100人余り。

結果がより明確になるように応募してきた100人に心理テストを行い、気質や性格が標準的な若者を抽出。無作為のグループ分けで、11人が看守役、10人が受刑者の役割を与えられ、2週間の予定で実験はスタート。

実験をよりリアルにするために、受刑者役に対して次のようなことが行われた。

警察の協力を得て、本物のパトカーと警官により実際に逮捕して実験用刑務所に連行。


受刑者役の被験者を警官が逮捕する実際の写真
(写真提供:PrisonExp.org


目隠しで実験用刑務所に連行された

その後、本物の犯罪者と同様に指紋を採取し、看守役たちの前で服を脱がされ全裸にした上、シラミ駆除剤を散布。


服を脱がされる様子

着用するのは、胸と背中に番号が記された薄い布で作られたワンピース型の囚人服のみ。下着の着用も禁止。頭には女性用のナイロンストッキングから作った帽子を被せた。

さらに、片足には南京錠のついた金属製の鎖をつけた。


受刑者役の被験者たち

これらは全て、受刑者役に屈辱感や無力感を与えるための処置だとされる。 

一方、看守役に対しては、軍服や警棒、表情を読み取られないようサングラスなどを支給。
権威や力や支配者といったものを強く感じさせる服装をさせた。


看守役の被験者

実験1日目

実験当初、看守役の被験者は自分たちの役割に戸惑いを感じていた様子がうかがえる。

その後の証言記録にも次のようにある。

「命令を出す役割は、非常に居心地の悪いものでした。同じ人間同士なのにという気持ちが膨らむばかりでした」(証言記録より)

しかし、徐々にその状況にも慣れ始める。

実験2日目

徐々に威圧的に振舞い始める看守役への不満を募らせた受刑者役の一部がベットでバリケードを作り、看守が自分たちの監房に入ってこられないようにする。


反発する受刑者役

これに対して看守役は別のグループの監房に押し入って、連帯責任として彼らのベットを奪い取るなどの対抗処置を行う。


ベッドを奪う看守役


看守役の被験者たち

実験3日目

看守役は権力をさらに行使するようになる。

1日3回と決められていた点呼を真夜中にも開始。
さらに、夜間のトイレの使用を禁止し、バケツにするよう指示。汚物は朝までそのまま放置された。

また、従順でないものは狭い独房に監禁するようになった。


壁に手をつかされ点呼が行われた


腕立て伏せさせられる受刑者役


独房へ監禁

これらは全て看守が独自の判断で始めたもの。

暴力は禁止されていたため直接手は出さないものの、自尊心を傷つける精神的虐待が始まっていた。

この時のことは、看守役のその後の証言記録には次のようにある。

「日が経つにつれ看守の役割を積極的に果たすようになりました」
「深夜2時半に囚人を苦しめるのが楽しかったんです」
「囚人を家畜のように考え、この連中が何かやらかさないように、注意していなければと思い続けていました」

実験4日目

受刑者役の被験者たちは無抵抗に看守の言動を受け入れるようになっていく。

看守役は、トイレットペーパーの切れ端だけでトイレ掃除をさせるなど、受刑者役に対して屈辱的な行為を強要する。


無抵抗に看守役の指示に従うように


罰としてトイレ掃除

「看守に反抗して見ても、何も変わらないと身に染みて感じました。実験が進むにつれ、みんな無抵抗になったのはそのためです」(証言記録より)

実験5日目

看守役の行為はさらにエスカレートし、受刑者役を四つん這いにして動物の性行為の真似を強要するにまで至った。

受刑者役への侮辱の言葉は、 実験初日には1時間あたり0.3回だったのが、5日目には5.7回に激増していた。


壁に手をつかされる


裸にされ仮面を被せられる

実験6日目

2週間を予定していた当初の計画は、大幅に短縮して打ち切られることになった。


受刑者役の二人がストレス障害に

ただし、看守役たちは「話が違う!」と実験の続行を希望したという。

(のちの証言記録で、看守役の被験者は「あの時は本来の自分とは別人になっていた」と語った)

実験が示したもの

結果的に、スタンフォード監獄実験は、状況の力が人間の行動にもたらす影響というものを如実に証明しました。

看守役の被験者は自分たちの役割を当然のことと思い込み、受刑者役の被験者たちに対して残酷で非人道的になっていきました。

この実験では、普通の人がたった数日で悪魔と羊に変貌してしまったわけです。

実験が示したことは、ごく普通の人であっても状況の力によって、たやすく悪魔にだってなりうるということ。

ジンバルドーについて

ちなみに、この実験を行なったのはフィリップ・ジンバルドーというスタンフォード大学の心理学者。

彼は元々スラム街出身。 悪事に手を染める友人たちを見て、状況が人を変えるということを目の当たりにして育ったわけです。

ジンバルドー自身はスラムから出るために学問を志し、心理学を学んだ。

しかし、当時の心理学では人の行動は元々の性格や気質で決まると考えられていた。
そんな中、ジンバルドーは状況が人の行動に強く影響するという状況論を強く支持し、それを実証しようとした。
この実験にはそんな背景があるわけです。

そして、この実験では、そのジンバルドー自身も状況に飲み込まれて冷静な判断が出来なくなっていたといいます。

実験中2人の被験者がストレス障害を発症し離脱していますが、それでもジンバルドーは実験をやめようとはせず実験にのめり込んでいく。

最終的には同じ心理学者である恋人から強く非難され、やっと我に返って実験の中止を決断したといいます。

映画

さて、この実験を題材にした映画がいくつかありますので参考までに紹介しておきます。

把握している範囲では、『es[エス]』 (2001)、『エクスペリメント』(2010)、『プリズン・エクスペリメント』(2015)の3つです。

描かれ方はそれぞれでだいぶ違うようですね。

まとめ

この実験はあまりにも衝撃的なため、この記事を書きながらも人間の中に潜む危険な心理的側面を考え込んでしまいました。

日本でもしばしば起こる「集団リンチ」や「洗脳」などの凄惨な事件の背景とも、どこか通ずるところがあります。

「環境や役割が人の心理に与える影響」だけでなく、 「集団心理が増長する攻撃性や残忍性」 「権力を行使する快楽」 「閉ざされた空間の危険性」 などについても考えることの多い実験です。

最後に一言。ふぅ〜、それにしても、この記事をまとめるのはとても疲れました。内容が重かったからか、アレコレ考えさせられたか……。おそらく両方ですね。。。

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カテゴリ モチベーションコラム
 タグ  心理学

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