喪失感〜心にポッカリ穴が空いた時の処方箋
喪失感(そうしつかん)とは、大切なものを失った時に感じる空虚な気持ちで、心にポッカリと穴が開いたような感覚のことです。
私たちは、家族や恋人やペット、健康や仕事などを失った時、大きな喪失感を感じることがあります。
それはまさに自分の一部を失ったような感覚で、精神的にはとても辛いものとなるでしょう。
深く落ち込み、全てが無意味に感じられ、先の見えない絶望感の中でなんの気力も湧いてこない、生きていても仕方がないと思うことさえあります。
私たちがそうした大きな喪失感を感じるのは、失ったものがその人にとって本当に大切なものだったからです。
自分自身の存在の拠り所だったかもしれません。
だからこそ、それを失った喪失感は魂の痛みとも言えるほど大きなものになるのです。
目次
人生は喪失の連続
大きな喪失感は精神的にとても苦しい体験となりますから、誰だってできれば経験したくはないはずです。
しかし、私たちは人生を歩んでいく中で様々なものを失っていきます。
形あるものは全て滅びる運命にあり、出会った人との別れだっていずれ訪れるのです。
生きていればそれには抗いようがありません。
時間は流れ、あらゆるものに終わりの時がやって来るからです。
そういう意味では、私たちの人生は喪失の連続と言っても過言ではありません。
生きていくのであれば、たくさんのものを失っていくこと、そしてそれに伴う喪失感と向き合うことは避けて通れないのです。
私たちが人生で喪失するもの
私たちが人生で喪失するものは次の5つに分類されます。
1、家族、恋人、恩人など、大切な人物の喪失
2、思い入れのあるもの、思い出の品など、大切な所有物の喪失
3、家や仕事など、居場所や環境の喪失
4、若さ、体力、身体の一部分の喪失
5、目標や自己イメージの喪失
仲間、恋人、家族との別れは、多くの人が経験したことがあるでしょう……。
災害やトラブルなどによって、家や仕事を失った経験がある人もいるかもしれません……。
年齢を重ねれば、誰だって若さや可能性を失っていきます……。
いずれも、その人自身の存在意義やアイデンティティに直結するようなものばかりです。
言い換えると、生きていくための心の支えとなっているようなものばかりです。
そうした心の支えとなっていたものが失われた時、その喪失感はとても大きなものになります。
それがその人にとって大切なものであればあるほど、喪失感は強くなるのです。
失って初めて大切なものだったと気づく
私たちはよく、「失って初めて、それが自分にとってかけがえのないものだったと気づく」ということがあります。
家族や恋人、健康や仕事などは、それが普通に存在していた時にはその大切さに気づかないものです。
もちろん、決して大切でないと思っていたわけではないでしょう。
しかし、いつの間にかそれが存在していて当然、まるで空気のようなものだと感じてしまうのです。
夫婦でよく外出していたというある女性は、夫を亡くして「当たり前の生活がどれだけ幸せだったか気づいた」と語っていました。
「街中で夫婦一緒にいる人を見かけると、いつも悲しくなる。自分は一人でも大丈夫だと思っていたけれど、本当は夫に頼っていたことに気づいた」といいます。
「失って初めてその大切さに気づくくらいなら、失われる前になんでもっと大切にしなかったんだろう」 そんな後悔をすることもあるでしょう。
失う前にその大切さに気づいていれば、失わずに済んだかもしれません。
しかし、後からいくら悔やんでも取り返しがつかないことが多いのも事実。
失ったものを取り戻すチャンスがもう一度あればいいのですが……。
大切なものが存在していた証
繰り返しになりますが、私たちが生きていれば、大切なものを失い大きな喪失感を味わうことは避けては通れません。
では、私たちはそんな体験にどんな意味を見出せば良いのでしょうか?
喪失感を味わうという事は、自分にとって”心から大切と思える何か”がそこに存在したことを意味しています。
たとえ短い期間だったとしても、心から大切な何かを持っていたことは揺るぎない事実であり、それは人生においてかけがえのない財産なのです。
喪失自体は不幸な出来事かもしれませんが、喪失のある人生が必ずしも不幸であるわけではありません。
むしろ、喪失感のない人生は大切なものを持たなかった人生であり、決してそれが幸せな人生とは言えないはずです。
たとえ喪失感に苦しむことになろうとも、大切な何かを持つことは幸せなことなのです。
光と陰、両方抱えて生きていくのが人生です。
自分にとって本当に大切な何かを持てたことに感謝しましょう。
喪失感の乗り越え方
喪失感でいっぱいになるのは、失ったものが自分が思っていたよりもずっと大事なものであった証でもあります。
喪失感で心がいっぱいの時は、その心の痛みに耐えられないほど弱ってしまうことだってあるでしょう。
しかしそれはいたって普通のことであり、多くの場合、その苦しみが永遠に続くわけではないということも忘れずにいましょう。
喪失感との向き合い方に正解はありません。
必要な時間をかけ、焦ることなくゆっくりと回復していきましょう。
喪失のショックが長引くのは、それだけ大きな喪失を経験したということなのです。
喪失の現実を受け入れるには時間がかかることがあります。
そのことを頭では理解できても、気持ち的にどうしても受け入れられないこともあるでしょう。
自分自身の心と体をゆっくり休めて、時間をかけて喪失感を乗り越えていきましょう。
そのためにできることには次のようなものがあります。
- 自分を許す。
- 過去ではなく未来に目を向ける。
- 何かに没頭する。
- 信頼できる人に相談する。
- 同じ体験をした者同士で繋がる。
- 専門家に相談する。
しっかり時間をかけ、自分を否定することなく今の自分に必要なことを無理せず行って回復していきましょう。
喪失感を乗り越え成長する
たとえそれを受け入れるまでに時間がかかったとしても、経験した喪失が避けられないものであるならば、最終的にはそれを受け入れていくしかありません。
そして、その経験を通して成長することがその人が今やるべき課題ということになります。
人間は苦しい経験から多くを学び、人間的に大きな成長をするものです。
喪失は辛い体験だけれども、それを通して大きく成長したあなたの未来にはもっと大きな幸せが待っているはずです。
自分にとって本当に大切だったものに心から感謝して、前を向いて歩いていきましょう。
一歩ずつ、ゆっくりと。。。
形あるものはやがて失われていく。
諸行無常
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